牛蒡子って、もしかしてゴボウの種ですか? 「牛蒡ってこんな字を書くんだ。キンピラゴボウに使うものの種が薬になるんだ」などと囁かれている方も多くないと思います。牛蒡子(ゴボウシ)は、キク科のゴボウの種子を乾燥したもので、古く中国から農作物として渡来したといわれています。牛蒡は食材として「根」をつかったキンピラゴボウは有名ですが、なんと「根」を食べるのは日本だけで、ヨーロッパでは「葉」をサラダに使っています。主な産地は中国、日本、韓国です。

そして種子部分の成分には、リグナン誘導体アクチゲニン(Arctigenin)、アクチイン(Arctiin)、マライレジノール、ラッパオール(lappaol)などを含んでいるため、薬効があるんです。生でかじって、じっくりと味わってみると、辛くて、苦みを感じます。そして冷たい感じです。

リグナンとは水溶性食物繊維の一種で、顕花植物の茎や根、種子などに配糖体や遊離の状態で存在します。例えば、ゴマに含まれるセサミンやセサミノールもリグナン類で、抗酸化作用や抗腫瘍効果が知られています。

薬効は、肺・胃に関係する疾病に多く使われ、根・種子ともに繊維質が多いので、お茶碗一杯の牛蒡を食べると便秘に良く、便秘でない方も、バナナ一本分の油で包んだような良い便が気持ちよく出るでしょう。

食物繊維は、糖尿病の方によく、血糖値降下作用があり、脂質代謝の改善にも良いでしょう。また循環器疾患にもよく、血管拡張作用や利尿作用、心臓運動抑制などに効果が期待されています。特にそこに含まれるArctiin 、Arctigeninは、HIVの働きを抑制する報告もあります。

その他に、中国では牛蒡子(ゴボウシ)は、内服することにより、去痰作用があり、消炎薬として効果もあるので、咽喉部の塞がりの改善や腫脹、疼痛の緩和や扁桃腺炎などに効果があり、また抗菌作用や解毒作用も併せ持つので、風邪の諸症状を改善する目的で、かぜ薬に配合されています。

現代では、一般に、湿疹や慢性炎症やアトピー体質の治療に使われることもあります。皮膚のかゆみや赤みを改善する*消風散(ショウフウサン)に牛蒡子が配合されている。

柴胡清肝湯(サイコセイカントウ)にも配合され、炎症をやわらげたり、血行をよくする効能と神経を鎮める身体と心、両面の状態をよくする効能をもっています。柴胡清肝湯は、かんの強い小児の神経症、慢性扁桃炎・扁桃肥大・湿疹や虚弱体質の人の慢性胃腸病・貧血・頸部リンパ節炎・肺門リンパ節炎・神経症などを改善するのによく使われています。

他に、子宮筋収縮作用などを有するため、婦人科系にも使われ、牛蒡子は、「ちょっとしこるかな?」という乳腺炎初期には効果があります。乳腺炎によく使われる漢方薬としては、十味敗毒湯、大黄牡丹皮湯、葛根湯、排膿散及湯などがありますが、詳しくは漢方専門にご相談下さい。

牛蒡子は、ホーローやガラスのケトルの鍋に10gあるいは20g程度を入れ、300ccから500cc程度のお水に浸し、とろ火で15から30分で煮ます。これを茶こしなどで濾し、煎液を1日3回に分けて服用します。2/3から半分程度に煮詰めてください。

反対に乳汁分泌が止まらない方には麦芽を使います。

※消風散:

消風散(ショウフウサン)とは皮膚のかゆみや赤みを改善する働きがあり、慢性の皮膚病(湿疹、じんましん、あせも、水虫、皮膚掻痒症)を改善する。患部からの分泌物が多く、強いかゆみをともなって、特に夏期や温暖時に症状が悪化しやすい人に用いられる。


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※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。