イチョウ科イチョウ属のイチョウの種子で古生代末期に出現し、厳しい氷河期を耐えて生息してきた植物です。約二億年という間その形態をほとんど変えていないといわれております。銀杏、銀杏仁、白果、白果仁、白果肉とも呼ばれ、肺を温め咳を止めタンをきり、毒を消す作用があり強壮強精の効果もあり頻尿、夜尿症咳などに効きます。薬味は甘、苦、で薬性は平です。

中医学で正確には収渋薬に分類され、体内から漏れ出るものを止める働きがあります。さらに収渋薬とは、収斂・固渋の薬性をもつ薬物のことをいいます。また、精気を収斂し滑脱させない固脱の作用もあります。

収渋薬は銀杏のほかに山茱萸(サンシュユ)・覆盆子(フクボンシ)・桑螵蛸(ソウヒョウショウ)・金桜子(キンオウシ)・五味子(ゴミシ)・南五味子(ナンゴミシ)・五倍子(ゴバイシ)・烏梅(ウバイ)・訶子(カシ)・肉豆蔲(ニクズク)・蓮子(レンシ)・石蓮子(セキレンシ)・蓮鬚(レンシュ)・蓮房(レンボウ)・芡実(ケンジツ)・罌粟殻(オウゾクコク)・赤石脂(シャクセキシ)・禹余粮(ウヨリョウ)・樗根皮(チョコンピ)・石榴皮(セキリュウヒ)・石榴根皮(セキリュウコンピ)・烏賊骨(ウゾクコツ)・麻黄根(マオウコン)・浮小麦(フショウバク)・糯稲根(ジュトウコン)・銀杏葉(ギンキョウヨウ)・鶏冠花(ケイカンカ)・刺猬皮(シイヒ)があります。

銀杏(ギンキョウ)の配合されている処方に定喘湯があり、喘咳し、気逆し、痰の多いなどの証に用います。定喘湯は、黄芩、桑白皮を配合して、肺熱の多痰、喘息、呼吸困難などの証に使用します。

銀杏には肺気を収斂し、喘咳をおさめ、著しく痰量を減少させる効能があります。そのため麻黄、甘草を配合し、喘息、痰による咳嗽には、鴨掌散を用います。

収渋止帯の効能としては、易黄湯があります。銀杏には除湿と収渋の効能があるので、蓮肉、胡椒、烏骨鶏と一緒に煮て食べても治療効果がよいのです。易黄湯は白濁帯下に用い、腎の元気が虚弱して生じた稀薄な帯下病(おりもの)に良いでしょう。湿熱による黄色い粘稠な帯下には、黄柏、芡実を配合して用います。また、白濁の帯下には、萆薢、益智仁などを配合し使用するのが良いでしょう。

食するときは毒性があるので、大量に服用してはなりません。特に生の銀杏は中毒を起こしやすいので要注意。 また最近では、銀杏葉(ぎんきょうよう)の健康食品も発売されています。銀杏と同じように毒性があるので、信用のおけるこだわりのあるメーカーを選んで購入しましょう。


『漢方の相談室』一覧へもどる次へ

※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。