フレンチパラドックスというフランスのボルドー大学の科学者であるセルジュ・レナウド博士による造語をご存じの方は、多いと思われる。その意味するところは、フランス人の喫煙率が相対的に高く、飽和脂肪酸が豊富に含まれる食事を摂取しているにもかかわらず、冠状動脈性心臓病に罹患することが比較的低いことが観察されていることを言う。赤ワインが心臓疾患の発生率を減少させることを推定したこのパラドックスの説明が、1991年に米国の「60 Minutes」で放映されたときは、赤ワインの消費量が44%も増加した。

この説の主役がレスベラトロールで、ブドウ、グレープジュース、赤ワインには多く含まれている。また、イタドリ<タデ科、漢方;虎杖根(コジョウコン)>(根)にも多く含まれている。その他には、桑(実)や落花生(皮)にも存在し、72種(12科31属)の植物で確認されている。

レスベラトロール(3,5,4′-trihydroxystilbene)は感染に対応して植物によって生産される抗菌性物質であるフィトアレキシンのスチルベン類に属するポリフェノールである。

レスベラトロールの老化の遅延、加齢に関連した疾病を防ぐ能力が広く報道されたため、近年、科学的関心及び大衆に強い関心が持たれてきている。その結果として、今や多くの多様なレスベラトロール配合サプリメントが市場に出ている。実情調査では日常的に多数の栄養補助食品を摂取している人の3人に2人がサプリメントとしてレスベラトロールを摂取しているという報告もある。

しかしながら、前記したように、その最適摂取量は不明である。赤ワインには約3mg/グラス、落花生には約0.1mg/100gであることから。用量の観点において、食事からの適切な摂取は不可能でサプリメントからの摂取が考えられる。

一方、赤ブドウ葉乾燥エキス混合物を配合したダイレクトOTC製品が薬事・食品衛生審議会一般用医薬品部会で承認され、市販されるようになった。

ちなみに、商品名は、「アンチスタックス」。

有効成分:  赤ブドウ葉乾燥エキス混合物。適応症;静脈血流改善。

効能・効果:軽度の静脈環流障害による、足(ふくらはぎ、足首等)のむくみ、むくみに伴う足のだるさ、重さ、疲れ、つっぱり感、痛みの改善。

なお、疾病治癒効果を期待して、海外では、Ⅱ型糖尿病、ガン、MELAS症候群を対象疾患とした数件の臨床試験が進行中である。

平成26年3月4日(翔)

末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)