〜薬剤師 青木 敏朗〜

プール熱の正式な病名は「咽頭結膜熱」といいます。小児を中心にアデノウイルスの感染により引き起こされる病気で、夏の時期にプールなどで感染することからプール熱と言われています。

主症状は発熱(38〜39度)や咽頭炎(腫れや痛み)、結膜炎(充血)などになります。流行時期としては、6月から始まり8月頃までがピークとなりますが、1年を通して発症します。

「咽頭結膜熱」は小児科定点把握疾患になり、国立感染症研究所のHPにて都道府県別の流行状況が確認できます。

国立感染症研究所 感染症疫学センターHP(IDWR速報データ)

・ 定点把握疾患感染症
地域の感染症の流行状況が迅速に把握出来る体制になっている感染症

アデノウイルスとは?

アデノウイルスは51種類の型が知られており、その型の違いにより「胃腸炎」や「膀胱炎」、「髄膜炎」などを引き起こすものもあります。

その中で「咽頭結膜熱(プール熱)」を起こす型は、5種類程度が知られています。

アデノウイルス感染症は、拭い取ったのどの浸出液や便などから検査キットで確定診断(容易にアデノウイルスが原因だとわかる)出来ます。

アデノウイルス感染は、夏場のプールなどで感染しますが、飛沫感染や接触感染などにより感染します。また、発熱している時期が感染し易いですが、感染者の自覚症状が治まっても数週間は感染する可能性があります。

症状について

潜伏期間(ウイルスが体に侵入してから発症するまでの期間)は5〜7日と少し長く、症状は発熱から始まり、頭痛、食慾不振、全身倦怠感、咽頭痛、結膜炎などです。結膜炎が「咽頭結膜熱」の特徴で、まぶたが腫れて激しい痛みが出たり、目やにが出ることもあります。

通常1週間程度で自然治癒しますが、長引くと2週間程度症状が続くこともあります。

治療薬について

確定診断が出来るようになりましたが、日本ではアデノウイルスに対する有効な治療薬なく、対症療法薬(解熱鎮痛薬や点眼薬、必要に応じて点滴など)の治療になります。

予防について

アデノウイルスは唾液や鼻水、涙や目やになどから感染します。流行しているときは、うがいや手洗いをまめに行ってください。家族で感染者が出た場合は、消毒はアデノウイルスはアルコール消毒は無効で、塩素消毒や煮沸による消毒が有効です。

具体的には、感染者とのタオルや食器の共用は避けて、衣服やタオル、また食器などは塩素系洗剤にて付けおいて消毒したり、煮沸可能な食器や器具などは煮沸(100度で3秒、56度で5分)して消毒するようにしましょう。

学校保健法における取り扱い

学校保健法では、第二種伝染病に位置づけられており、主要症状が消退した後2日を経過するまで出席停止とされています。ただし、医師により伝染の恐れがないと認められた場合は、それより早く登校が可能となる場合もあります。ウイルス排泄には個人差もありますから、プールの可否について判断に困る場合は、医師に相談するようにしましょう。