病変部に溶連菌が入り込むことでアトピー性皮膚炎が重症化してしまった、生まれた時からアトピーの幼稚園男児の事例です。来店したのは溶連菌感染を起こし、1週間入院し、やっと退院してきた3月初旬のことです。

頭と手首と足首は、包帯でグルグル巻きにされ、包帯を外すと頭からリンパ液が出ていて、髪がくっつき、とても櫛が通る状態ではありません。顔は真っ赤で、目も腫れとかさぶたで、開けることもできません。眼球も赤く、舌もイチゴ舌でした。耳も切れて真っ赤に腫れ上がり、そこもリンパ液が固まっていました。首も赤く、全体に腫れ上がっている状態です。背中と腹部、腕、そして腿と下肢には溶連菌特有の発疹が無数にあり、所どころトビヒのようになっています。脇とお尻、手首と足首には、その発疹とかさぶたが重なり合い、厚くなって熱を持っています。また、頭や首のリンパ節はボコボコに腫れ、頭が変形しているかと勘違いするほどです。

通常、溶連菌感染は1カ月ほど消失せず、抗生物質を服用し続けなければなりません。男児の場合、来店時の状態は溶連菌感染との戦いでした。溶連菌が再び増えると、40度の熱が出て、また入院してしまう旨を両親に伝え、治療は始まりました。

男児にはまだ微熱があり、水をよく飲み、身体全体にむくみがあります。そこで、「風邪(ふうじゃ)」追い出し、利水する「越婢加朮((えっびかじゅつ)湯(とう)」に、さらに清熱の目的で「石膏(せっこう)」を増量しました。このようなアトピーは日ごとの変化が激しいため、一週間ずつ調整しながら漢方薬を出しました。すると、一週間単位で赤味は引き、かさぶたが消え、発疹も少なくなっていきました。幸い、再入院することもなく、一カ月後には包帯は完全に取れ、無事に小学校の入学式に行けたと報告がありました。

その後3カ月、脾(ひ)を健やかにして皮膚を潤す「双和(そうわ)湯(とう)」と、腎(じん)の「陰分(いんぶん)」を益(ま)す「知(ち)柏地(ばくぢ)黄丸(おうがん)」を服用しながら、学校に元氣に通い、色白でつるつるとした肌を維持しています。


『漢方の相談室』一覧へもどる次へ

※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。