〜薬剤師 今井 孝浩〜

◎便秘とは?

成人では食事を摂取して便として排泄されるまでの時間は24~72時間。摂取された食物は消化管を通過する間に栄養素を体内に吸収できるよう分解され、栄養素は主に小腸で吸収され、大腸で水分が吸収されて直腸に到達、直腸に満たされて内圧が上がると直腸壁の神経を介して大脳に伝えられ便意が起きる。次いで反射的に直腸の蠕動運動、肛門括約筋の弛緩で体外に排泄される。

成人の1日の糞便量は、100g~250gで65%~75%は水分で、残りが固形物。便の量は、吸収の良い物(魚・肉等)は少なく、穀物・野菜等食物繊維の多い物では水分を多く吸収しカサが増す。カサが増すと腸管を刺激し排便を促す。便の色は胆汁の色で、食物の影響を受ける。

○便秘の明確な定義はないが、一般的に3日以上排便がない状態。しかし、排便習慣には個人差があり週1~2回の排便でも問題ない場合もある、一方で毎日排便があっても、便が硬い、残便感、腹痛、腹部膨満感、食欲不振など自覚症状があれば便秘とされる。

○便秘は器質性便秘と機能性便秘に大別される。

  • 器質性便秘:腸管内腔狭窄が原因で通過障害で起こる便秘。イレウス、大腸癌、腸管癒着などが含まれ、血便、腹痛、嘔吐があれば受診勧奨。腸管穿孔を誘発してしまう可能性あるので下剤投与は原則禁忌。
  • 機能性便秘:弛緩性便秘「大腸運動が低下」
    痙攣性便秘「大腸運動亢進」
    直腸性便秘「直腸に便が到達しても排便反射起こらない」

急性便秘は発熱に脱水、経口摂取不足のためにしばしばみられる。 便秘が3~4週間続いている患者は慢性便秘、あるいはその可能性。頑固な便秘であれば器質的原因を考える。

◎便秘薬

便秘薬は機能性便秘の緩和に適応がある。

○その作用により大きく4つに大別される

  • 塩類下剤:浸透圧により腸管内の水分を吸収し蠕動運動促進。
  • 膨張性下剤:薬剤自体が水分を吸収膨張し大腸を刺激。
  • 湿潤性下剤:便の表面張力を低下させ軟便化。
  • 刺激性下剤:腸管神経叢に直接作用して腸管蠕動運動亢進。

※小児:浣腸

※妊婦:原則使用しない。授乳中:なるべく使用しない。

※高齢者:浣腸、坐薬、膨張性下剤

※腎障害・透析:マグネシウム製剤避ける。

○受診勧奨

※器質性便秘

※薬剤性便秘(麻薬・抗精神薬・抗うつ薬・抗コリン薬等)

◎生活上の注意

○刺激性便秘薬は強力だが耐性がつきやすいで、日常的には非刺激性の便秘薬を使い、それでもだめな時に刺激性便秘薬を。 しかし便秘薬を服用するのはあくまで最終手段。

○慢性的便秘を解消するには、まず生活習慣を改善するのが基本で、それをサポートする形で便秘薬を使い分ければ、便秘をより効果的に解消できるはず。

○便秘改善の基本は生活習慣の改善で食生活の改善や運動不足の解消。運動すれば腸への刺激になり、蠕動運動も活発化。水溶性食物繊維は便を軟らかくし、脂溶性食物繊維は便のカサを増やして排便を促す。


参考:今日のOTC薬(南江堂)