ビタミンは、五大栄養素のひとつで、ヒトの生命活動に必須の物質であり、全部で13種類ある。この13種類のビタミンは、大きくは二つに分類される。すなわち、脂溶性ビタミン(油に溶けやすいが、水には溶けにくい)と水溶性ビタミン(水に溶けやすいが、油には溶けにくい)である。

脂溶性ビタミンは、ビタミンA、D、E、Kの4種類で、水溶性ビタミンは、ビタミンB1、B2、B6、B12、C、葉酸、ビオチン(H)、パントテン酸(B5)、ニコチン酸(ナイアシン:B3)の9種類である。

上記13種類のビタミン名は総称で、具体的には各ビタミンには複数の物質が該当する。例えば、ビタミンDには、ビタミンD2およびD3等がある。

さて、それぞれのビタミンは、動物・植物中には存在しているが、ヒトの体内では合成できないか、できても必要量には満たない。貧困による貧しい食事および偏食習慣あるいは激しい運動・労働等によって、個々のビタミン欠乏症(B群ビタミンである葉酸の欠乏症として悪性貧血症がある)を発症する。なお、ビタミンEのように、まだ欠乏症が定かでないビタミンもある。

なぜ、ビタミンはヒトの生命維持・保健に必須なのか?健康な生命活動を営むためには、外敵から自分自身を守らなければならない。ヒトの体表面を覆うのは皮膚であり、皮膚はこれら外敵の攻撃に対する一次防御の役目を果たす。多くのビタミンが不足すると皮膚に異常が起こる。ヒトが成長していく過程で骨・内臓・神経等へと細胞の増殖・分化が生体内で起こっている。この過程において、ビタミンは多くの役割を果たす。ヒトは、食物を摂取し、それらを消化し、必要な物質を吸収し、必要な箇所へ移送・分布をさせる。そして、不要になったものを排泄する。これらの一連の過程において酵素が大きな役割を果たすが、ビタミンはこれらの酵素が正常に作用するために補酵素として大きな役割を果たし、成長・保健に関与している。

さて、前述したB群ビタミンである葉酸の認知度が急激にあがっている。妊娠初期に葉酸の体内量が少ないと神経管閉鎖症の新生児出産のリスクが増える。したがって、妊娠の可能性がある女性は1日400μgの葉酸を食事、サプリメントあるいは医薬品から摂取する必要がある。実際には、食事からの十分な摂取は難しい場合が多いと思われる。この疾病発症の原因は、葉酸が不足することで、体内にホモシステインという物質の濃度が高くなり過ぎるためである。ホモシステインの体内濃度適正化に葉酸が必要である。また、この調節にビタミンB6およびB12も関与している。なお、ホモシステインの体内異常濃度は、認知症のリスク増加にも関係するという説がある。


末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)