もう15年前くらいになるだろうか、ACEビタミンという用語ができた。この頃に、抗酸化作用、抗酸化ビタミンという用語もできた。すなわち、ACEビタミンとは、抗酸化ビタミンを意味する。そして、これらビタミンの持つ抗酸化作用が酸素や日光等による酸化的障害を修復させることで、疾病発症を予防する可能性があることが世界的に認識されてきた。ACEビタミンとは、ビタミンA、ビタミンC、ビタミンEのことである。その後もこの分野の研究はすすみ進展はしているが、ヒトでの確定的な証拠となると未だに不十分である。その理由は、ヒトの体内に発生する酸化物質の状態を把握することは非常に困難であるために、当然その抗酸化作用の評価も間接的な域をでないのが現状である。さて、これらの3種類のビタミンについて簡単に紹介する。

ビタミンA(β-カロテン);

抗酸化作用を示すのは、緑黄色野菜や果物に豊富に存在するβ-カロテンである。β-カロテンは、ビタミンAの安全型(過剰症がない)といわれており、その役割は変わらないが、喫煙者においては、摂取を控えた方が良いというのが現状である。食事あるいはサプリメントから摂る。さて、ビタミンAはレチノールという活性物質名で種々の重要な働きを示す。なんといってもヒトの成長・発達に必須であり、不足することで、多くの体の基本的な機能が不全におちいる。良く知られているのは正常な視機能の維持である。ビタミンA不足の小児は世界中で1億人とも10億人とも言われており、失明、死への経過をたどり、いまだに大きな問題となっている。また、細胞の分化作用がある事から抗ガン剤としても処方されている。さらに、身近なところでは、皮膚の正常化作用が強く、高齢化に伴う“しわ”等の皮膚の老化の進行を抑える。海外では、一般用薬としてこれらの適応症がある商品がある。最後にビタミンAは、過剰摂取による毒性が強いことを忘れてはならない。

ビタミンC;

日本人には、最も馴染みのあるビタミンではないだろうか。様々なビタミンCに関する疾病治癒に関する話題がのぼり、確証はないが、いまだに完全には否定もされていない。そのなかで有名な作用はカゼに効く、美白作用等がある。しかし、これらの作用については、今ひとつヒトでの確証できるデータが得られていないのが現状である。今後も検討がつづくのであろう。そのような状況下で、確実なところは、コラーゲン合成に対する促進作用は、良く証明されており、この作用によって、正常な骨や皮膚の維持に役立つというところであろう。鉄の吸収促進も大事な作用である。

ビタミンE;

抗酸化作用によって、ビタミンC、β-カロテンと共に最も疾病予防と関係が深い、特に循環器系疾病の予防と結びつけられたビタミンで、食事から十分量を摂るのは難しく、サプリメントやOTC薬から摂る必要があるビタミンである。高齢者における補給が推奨されており、血行を良くして冷え等を改善する効果がある。油の酸化防止剤としても重宝されており、体内における過酸化物質の産生を防ぐ。この作用から加齢臭の減少の可能性が検討されている。


末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)