今年も梅雨明けと共に、猛暑の日々。テレビでは、毎日熱中症による死亡者数あるいは救急車で病院に運び込まれた方の数が報告された。

さて、夏の暑さに打ち勝つために奈良時代から食されてきた食品と言えば??

最近国際自然保護連合によって“レッドリスト”に指定された“ニッポンウナギ”である。平賀源内が考案したといわれる「土用の丑」の日には、多くの日本人が蒲焼<関西では“鰻どん”を“まむし”という>に舌づつみをうたれたことであろう。

ところで、古来の食習慣には、現在の科学によって裏付けられることが多々見られる。

ウナギも、まさしくそのような食品で、栄養価が高く、微量栄養素として、疲れを和らげるビタミンB1をはじめ、ビタミンA、B2、Eが豊富である。毎日、ウナギ(肝)を食べすぎると、ビタミンA過剰症を心配する必要があるともいわれるほどビタミンAが多いことは有名である。そして、マクロ栄養素として、脂肪に分類されるω-3多価不飽和脂肪酸であるDHAとEPAが多いことで知られる。

さて、今年の1月に1980年から24年間にわたり、日本人約9000人<全国300地区の30歳以上の男女>を対象に追跡調査を行った厚生労働省研究班の報告が公表された。その結果とは、DHAおよびEPAが豊富な魚を日頃から摂取する食習慣のあるヒトは、心臓血管系疾病や脳卒中などによる死亡リスクが有意に低いことを示したものである。

DHA・EPA摂取量に基づいて4群にわけて比較検討した。最も摂取量が少ない群の摂取量は、サンマ1/4尾程度<平均0.42g/日>。最も摂取量が多い群の摂取量は、サンマ1尾弱<平均1.72g/日>。

※DHA・EPAの摂取量が最も多い群では、心臓血管系疾病の死亡リスクが摂取量の最も少ない群より20%低く、DHA・EPAの摂取量が多いほど、統計学的に有意に低い。

※30~50代<1980年時点>では、DHA・EPAの摂取量が最も多い群の心臓血管系疾病の死亡リスクが摂取量の最も少ない群より32%低く、DHA・EPAの摂取量が多いほど、統計学的に有意に低くなる。

※心臓血管系疾病のひとつである脳卒中死亡リスクは、30~50代<1980年時点>では、DHA・EPAの摂取量が最も多い群は、摂取量の最も少ない群より41%低く、統計学的に有意な差がある。

国民健康栄養調査結果によると、魚介類の摂取量は年々低下している。また、世代別では、若者で低下傾向が強い。世界の中でも男女とも平均寿命が80歳を超える長寿社会の日本であるが、かなり懸念がある。


末木一夫

(薬学修士、日本ビタミン学会評議委員およびトピックス担当委員。国際栄養食品協会 専務理事および科学委員会委員長、元健康日本21推進フォーラム事務局長、元お茶の水女子大・明治大非常勤講師)