〜薬剤師 宮澤 正幸〜

「がん」と聞くと不治の病、治療が大変などいろいろなイメージがあると思いますが、実は正しく理解されていない場合も多く、インターネットなどでは怪しい情報も散見され、間違った知識のまま治療されている方によく出会います。
今回は、がんについてまとめてみたいと思います。

まず、がんは、「悪性新生物」とも呼ばれますが、文字だけ見ますと地球外生命体のようですが、もともとは自分自身の細胞が遺伝的な変異などが起こり、それを自分の免疫機構でコントロールできずにどんどん増えてしまう細胞が「がん細胞」です。がんの原因はいろいろあり、喫煙など有名なものの他に、子宮頸がんはある種のウイルスが関与していることがわかっており、そのウイルスに対するワクチンを投与することでかなり予防ができますが、日本国内ではワクチンの副反応が問題となりワクチン接種が進んでいませんが、海外では成果を上げていて、関連学会では子宮頸がんワクチンの早期再開する要望を表明しています。また、胃がんはヘリコバクター ピロリを除菌することで、リスクを減少させることがわかっています。最近では、海外の女優が、遺伝子的に乳がんのリスクが高いことが遺伝子検査で判明し、将来の為に健康な乳房を切除したことも世界的にニュースになりましたが、よく言う「がん家系」についても、少しずつ分かってきました。医療保険は利用できませんが、専門の施設ですでに検査が可能となっていますが、その解析の結果のフォローについては、まだ本邦では確立していないのも現実です。

がんの治療は、ここ十数年でかなり進歩しました。2018年、本庶佑先生がノーベル生理学・医学賞を受賞した研究も抗がん剤の研究だったことも記憶に新しいところです。今まで主流だった抗がん剤は、がん細胞の分裂を抑える薬が主流でした。その後、がん細胞の遺伝子の特徴を利用した分子標的薬というジャンルの抗がん剤が併用されるようになり、抗がん剤の効果は飛躍的に上がりました。そこに、自分の免疫力をあげて、がん細胞を減らす「免疫チェックポイント阻害剤」が出てきました。まさに、ノーベル賞の研究です。この「免疫チェックポイント阻害剤」の発売当初、一部のメディアでは、「副作用がなく、効果も高く、体にやさしい夢の抗がん剤が発売になった!」と煽り、混乱をきたしました。実際は、吐き気などの副作用は少ないものの、肺の炎症や甲状腺や膵臓の機能異常など注意しなければならない副作用も多くあります。また、薬剤の価格が高額であった為、保険制度上、例外的に薬剤の価格の見直しがされるなどいろいろ話題にもなりました。現在では、この研究を応用して、多くのがん治療に応用されつつあります。

がんの治療は、今後も複雑化して行きます。今後もお役に立つ情報を提供できればと思います。