【質 問】私は55歳の喫茶店を営む女性です。営業中は厨(ちゅう)房にいることが多いので、毎日汗をびっしょりかいて働きます。特にこの夏は、Tシャツを3枚くらい替えながら働いています。そのため非常に疲れていますが、ほかに代わる人もおりません。暑いと呼吸が苦しくなり、もうろうとして意識が遠のいてきます。水分は取っていますが、飲むとすぐに汗が噴き出ます。仕事の他に祖母の介護もあり、睡眠もままなりません。何か良い漢方薬を処方してください。
【答 え】

夏の暑い時期に暑い場所で働いていると熱を生じる。また元気は、腎の精気と脾胃が吸収した食物の気、および肺が吸収した空気の3つが結合して産生される。元気は強い活動力を持つ精微物質で、全身を流れ各所に分布し、臓腑経絡など様々な組織で生命活動を営んでいる。

この女性は、熱によって元気を傷(やぶ)られ、陰液といわれる身体を冷やす体液をも消耗してしまった。よって、汗が多く身体がけん怠し、呼吸は浅く口が渇いている。

気を益して体液を自分の力で生み出し、熱を清して陰を養い、肺に気を集め、皮毛の調節機能を改善して汗を治める「生脈散・しょうみゃくさん」を服用してもらった。この処方は夏に多用するが、女性は今までの夏とは違い、元気に働けると喜んでいた。


『漢方の相談室』一覧へもどる次へ

※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。