〜薬剤師~金子 昌弘〜

吸入薬(エアゾール剤)編

前回のドライパウダーと同様に気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:以下COPD)の治療を中心に使用される薬剤のため、使用したことのない薬かもしれません。ドライパウダー型が開発される前までは、エアゾール剤が吸入薬の主流として使用されていました。使用の際にはタイミングをとることが必要ですが、全体的に器具は小さく、携帯しやすく緊急時に対応しやすいタイプです。お薬を有効に安全に使用していただくために、今回は「エアゾール剤の使い方と注意」を紹介したいと思います。

エアゾール剤とは

エアゾール剤は、ボンベ内に充填された薬剤を噴射ガスの力で一定量噴霧させます。加圧噴霧式定量吸入器(pressurized Metered Dose Inhaler:pMDI)が正式名称ですが、ドライパウダーに対してエアゾールと表現しています。

噴霧した薬剤を吸入するため、タイミングを合わせることが重要です。タイミングがずれると必要な薬剤が気管支に入らない可能性があります。また吸入する向き(吸入口のくわえ方)により噴霧された薬剤が、上顎や舌などを直撃して気管支に入る量が減ってしまうこともあります。そのため吸入指導を受けて正しく吸入していくことが必要になります。

ただし、吸入する力が弱い幼児や高齢の方に対しては、吸入補助器具(スペーサー)を使用することでドライパウダー吸入器より吸入しやすい利点があります。また、ドライパウダーに対して薬剤の平均粒子径が小さいため、気管支細部を含め、薬剤の沈着率が高いことが特徴です。

エアゾール剤一覧

ステロイド薬オルベスコインヘラー、フルタイドエアゾール、キュバールエアゾール
β2刺激薬メプチンエアー、メプチンキッドエアー、 サルタノールインヘラー、アイロミールエアゾール
ステロイド薬・
β2刺激薬配合剤
アドエアエアゾール、フルティフォーム、ストメリンDエアロゾル(抗コリン薬含む)
抗コリン薬アトロベントエロゾル、テルシガンエロゾル、スピリーバレスピマット(分類上は※)
抗アレルギー薬インタールエアロゾル

※SMI:ソフトミスト吸入器で噴射ガスを使用しないでミスト(霧)にして噴霧する吸入器


吸入方法 〜ポイントはゆっくり深く〜

① ボンベ中の薬剤が均一に混ざるようによく振ります。
(薬の残りが分かるカウンターがついているものはボンベの中の薬剤が均一に混ざるようによく振り、説明書を確認してカウンターが所定の回数を示すまで空噴霧を行います)

無理をしない程度に十分息を吐き出します。

③ 舌を下げてのどを広げた状態にして、吸入口をくわえて息をゆっくり吸い込みながらボンベの底を強く1回押して吸入します。
(医師の指示により、吸入口をくわえないで口から約4cm離して吸入する方法もあります。噴射された薬剤の速度が低下して口腔内への薬剤の付着を抑え、薬剤が空気とよく混ざることで気管支に入る薬の量を高めることができます)

吸入後、しばらく息を止めます。

⑤ 吸入口から口を離し、ゆっくり息を吐き出します。

⑥ 医師の指示により、1回2吸入の場合は③からの操作を繰り返します。その際1分ぐらい間隔をあけるようにしてください。

⑦ ステロイド薬、β2刺激薬および配合剤は、吸入した後にうがいします。

⑧ 吸入後は、吸入口を清潔に保ってキャップをつけてください。


吸入補助器(スペーサー)を使用することで吸入しやすくします

噴霧と吸入のタイミングが合わせにくい場合や、吸入器の向きが一定しない、噴霧時の刺激が強い場合などには吸入補助器具を使用すると吸入しやすくなります。

吸入補助器は、吸入薬と口の間に器具(ふくらみのあるパイプのようなもの)を付けることで空間を作り、吸入補助器内に噴霧した薬剤を吸うために効率よく吸入することができます。ただし器具によっては大きいものもあるため、携帯して持ち歩くことは大変かもしれません。吸入補助器には種類がありますので、薬剤師に確認するようにしてください。


薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を

エアゾール剤は、小型で携帯しやすく、吸い込む力が弱くてドライパウダー吸入器では吸入できない場合に使用しやすい利点と、噴霧と吸入のタイミングが合わせにくい欠点があります。その際には薬剤師による吸入指導と適切な吸入補助器(スペーサー)の使用で治療効果を高めていくことができます。有効に安全に薬を使用していただくために、薬の使用方法て何か不明な点がありましたら、まず薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。


参考文献:グラクソ・スミスクライン株式会社 吸入療法ガイド