統合失調症で悩む23歳の男性は店内に入るなり、「ここに盗聴器は置いてないでしょうね」と小声で聞いてきました。就職活動で緊張が続き、そして毎日が反省の連続だったそうです。入社3カ月で増々ひどくなり、退社に至りました。不安が強く、人のささやく声が自分の悪口に聞こえます。食欲もなくなり、食べてもおいしくありません。寒気と吐き気があり、強迫観念が常に付きまといます。移動が怖く、咳払いが聞こえてきて、緊張感は募るばかりです。夏は扇風機が回る音でイライラし、落ち着かなくなり、その反面さみしさも強くなってきます。

そこで脾を健やかにし、心(しん)を養う「帰脾湯(きひとう)」に、氣をめぐらし緊張をほぐすために「厚朴(こうぼく)」と「蘇葉(そよう)」を加えて服用してもらいました。

3カ月後には、病院の薬が8種類から2種類にまで減り、現在は症状に合わせて調合を変えて服用中です。


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※これらの『おくすり相談事例』は薬剤師・鍼灸師の福島勇二先生が湘南朝日に連載したコラム『漢方の相談室』より転載したダイジェスト版です。