〜薬剤師~金子 昌弘 大島 崇弘〜

点鼻薬編

辛い花粉症の時期になりました。花粉症治療のため病院で処方された薬や一般用医薬品を購入して使用している方も多いのではないでしょうか。一年のうちで点鼻薬がもっとも使われるこの時期に、改めて点鼻薬の使い方の確認をしていただければと思います。お薬を有効に安全に使用していただくために今回は「鼻炎のための点鼻薬の使い方と注意」を紹介したいと思います。

点鼻薬とは
 鼻腔内の粘膜に直接噴霧し、アレルギー反応等による炎症を鎮めることで、鼻炎を改善させる薬剤です。また鼻腔内の血管収縮をさせて、鼻粘膜の充血や腫脹(腫れ)を抑えて鼻づまり感を改善するものもあります。
 大別すると抗アレルギー薬とステロイド薬、血管収縮薬があります。お薬が直接患部に作用して全身への影響が少ないため、内服薬では眠気が出やすい方などに対して使用しやすい剤型です。
 点鼻薬の剤型のほとんどは液剤が定量出る噴霧型ですが、パウダー噴霧剤や液剤をそのまま鼻腔に入れる薬剤もあります。
抗アレルギー薬 クロモグリク酸ナトリウム、ケトチフェンフマル酸塩、レボカバスチン塩酸塩、アンレキサノクス など
消炎鎮痛用 アズレンスルホン酸ナトリウム、グリチルリチン酸ジカリウムなど
血管収縮薬 ナファゾリン硝酸塩、トラマゾリン塩酸塩、塩酸テトラヒドロゾリン(製品としてはプレドニゾロン配合) など
 抗アレルギー薬は、ヒスタミンが出てこないようにする薬や、ヒスタミンの受容体をブロックしてアレルギー症状を抑えます。比較的症状の軽い方や、抗アレルギー薬の内服で眠気が気になる方に使用することがあります。ステロイド薬は中等症からいつもティッシュペーパーが手放せないような重症の方に使用され、点鼻薬の中心的な薬剤となっています。強力な抗炎症作用で鼻粘膜の症状を緩和します。血管収縮薬は、鼻腔内の毛細血管の血管平滑筋に働くことで血管収縮を起こして、鼻粘膜の腫脹を抑えて鼻詰まり感を改善します。
点鼻方法
 抗アレルギー薬、ステロイド薬のほとんどが定量噴霧式の方法で製品化されています。そのため容器を初めて開けて使用するときには、定量が出るまで予備噴霧が必要になります。(製品により予備噴霧の回数は異なりますので注意してください)また容器の中の薬剤は懸濁液(薬剤が溶液に溶けていない状態の液)のものが多いため、使用する前には必ずよく振ってから使用するようにしてください。
  1. 新しい容器を使い始めるときは、よく振った後に薬剤ごとに定められた予備噴霧を行ってください。あくまでも初回のみです。毎回行うと薬がすぐになくなるので注意してください。
  2. 2度目は天井が見えるくらい上を向き、のどの奥まで液が届くようにして15秒程度うがいします。
  3. 頭を少し下げて、容器の先を上向きにして片側の鼻腔に入れて、定量が出るように噴霧してください。
  4. 噴霧した後に容器の先を鼻腔から離して、点鼻した液が容器に逆流しないように注意してください。
  5. 噴霧後は、薬が鼻の奥まで行きわたるように、顔を少し上に向けた状態でしばらくの間、鼻から静かに息を吸って口から吐き出すと効果的です。
  6. 使用回数は各薬剤や症状により異なります。医師からの処方薬では医師の指示を守り、一般用医薬品では説明書をよく確認してください。
  7. 使用後は噴霧器の先端をティッシュペーパーなどできれいに拭き、キャップをして保管してください。

使用後のお薬管理も大切です
 う衛生的に使用することが大切です。鼻腔内は微生物のたいへん多いところです。そのため鼻腔内に差し込んだ点鼻薬のノズル部分はしっかりと拭いて、清潔を保つようにしてください。
 薬剤の種類により1日に使用する回数や1回に噴霧する回数が異なります。また薬剤の種類により使用できる噴霧数は28回から120回など様々です。使用できる回数を超えると定量噴霧されないことがあるため、残りの回数がわかるように使用回数を記録しておくようにしてください。
花粉症の点鼻薬はステロイドが主流です
 花粉症の治療では病型と症状により使用する薬剤を決めます。鼻アレルギー診療ガイドラインにでは、軽症の場合では第2世代の抗ヒスタミン薬を内服し、効果不十分の場合では鼻噴霧用ステロイド薬を使用します。
 ステロイドに対して全身への影響を心配される方もいますが、体内への吸収はほとんどありません。また現在、主流になっている製品のステロイドは局所で効いて、吸収後速やかに代謝されて効果のなくなるタイプのものです。指示を守り治療していくことが大切です。
血管収縮剤の点鼻薬を使用する場合の注意
 鼻づまりの症状が強いときに使用します。他のタイプの薬剤に比べ効果が早くでるため、長期・過剰に使用してしまう危険性があります。頻回に使用することで薬の反応性が低下することや、交感神経α受容体刺激作用により疲労、不眠、めまい、吐き気などを引き起こすことがあります。また血圧の上昇や頻脈等の危険性があります。漫然と長期に使用することで、局所粘膜の二次充血を引き起こし、鼻づまりが悪化することがあります。鼻粘膜の過剰な増殖を促し、薬剤性の肥厚性鼻炎の原因になることもあります。一般用医薬品にも血管収縮剤を含む製品が多いため、購入の際は薬剤師によく相談して、用法用量を正しく守ることが必要です。なお過量使用になる可能性があるため2歳未満の乳・幼児には使用できません。

薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を
 花粉症に使用する点鼻薬には大きく分けて3種類に分けられ、症状に応じて使い方も異なる場合があります。また鼻腔に使用するため品質上の管理にも十分注意が必要です。以前処方された薬や、購入した薬の残りを使用することは注意が必要なこともあります。安全に薬を使用していただくために、薬の使用方法て不明な点がありましたら、まず薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。

参考文献 鼻アレルギー診療ガイドライン2009 トラマゾリン点鼻液添付文書