〜薬剤師~金子 昌弘 大島 崇弘〜

肛門坐薬編

肛門坐薬(以下坐薬)は、薬を油脂性や水溶性の基剤に混ぜて紡錘形にしたもので、肛門へ入れて使用する薬です。

肛門に坐薬を入れると、油脂性基剤の坐薬は体温で基剤が溶け出し、水溶性基剤の場合には直腸内の水分を吸収して溶け出します。薬が直腸粘膜から吸収され薬の効果が現れるため、吐き気止めや解熱剤、けいれん治療薬などを服用しにくい場合などに使われます。抗生物質や喘息治療薬から麻薬などの坐薬もあります。また痔の治療や便秘薬のように、主に直腸患部に作用する薬もあります。

「坐薬は座って飲む薬ではありません」・・・薬剤師が何十年も前から口にする冗談のような注意ですが、それほど馴染みのない薬かもしれません。

実際に使用したことのない方も多い薬なので、今回は坐薬の使い方と注意を紹介したいと思います。

使用方法

  1. 使用する前に手をよく洗い、便意があれば排便を済ませておきます。
  2. 小児に使用する場合には、1回に使用する量が半分や、2/3個分などにすることがあるので、先生に指示された量を用意します。半分や2/3個分にする場合は、包装された状態で清潔なハサミなどで切ってください。切った部分から押し出すと薬が崩れやすいので、とがった方側から包装フィルムをはがしてください。半分や2/3個分にした場合の残りは捨ててください。
  3. 包装フィルムから取り出し、薬のとがった方側に水を少し付けるとすべりがよくなり、スムーズに肛門に入ります。冷所保存の薬は、とがった方側をしばらく指先で温めると表面が少し解けてくるので入れやすくなります。
  4. とがった方側を肛門に当てて挿入します。その際、坐薬の後側をティッシュペーパーなどでつまんで使用してください。
  5. 奥まで入れてしばらく押さえておきます。奥まで入れずに途中で離してしまうと、薬が出てしまうことがあります。
  6. 奥まで入れてしばらく押さえておきます。奥まで入れずに途中で離してしまうと、薬が出てしまうことがあります。
  7. 使用後20〜30分の間は運動したりせずに、安静にします。
  8. もしも挿入してから坐薬が出てしまった場合は、原型をとどめた状態のものなら新しい薬を入れてください。小児の場合では過量の吸収を避けるため、排出したものを再挿入した方が安全です。溶けた状態(10分位経過した後で)の場合は薬がある程度吸収されています。改めて使用しないで様子を見てください。
  9. 使用後にも必ず手を洗うようにしてください。

2種類以上の坐薬を使用する場合
 特に小児の場合、吐き気止めと解熱剤など、2種類の坐薬を使用することがあります。時には、けいれん止めの薬を加えて3種の場合もあります。坐薬は有効成分を基剤に加えて固めたものですが、基剤には水溶性基剤と油脂性基剤があり、同時に入れてしまうと吸収が悪くなることがあります。そのため、もし2種類以上の坐薬を使用する場合には、30分以上の間隔をあけるとよいでしょう。
 入れる順番は医師の指示どおりに使用してください。もし特に指示を受けていない場合には、緊急を要するものから使用します。例えば上記の3種類ならば、けいれん止めの薬を使用して、吐き気止め、解熱剤の順で使用します。

保管に注意してください
 保管は冷所で保存するものと室温で保存するものがあります。室温保存の薬も、30℃を超えると軟らかくなるため、高温になる場所は避けてください。
 もしも軟らかくなってしまった場合は、とがった方を下にして冷所で固まるまで保管してください。
 冷蔵庫で保管する場合、お薬の袋はかさ張るため袋から出してしまうことはないでしょうか?用法用量の確認をするためにも、必ず薬の袋に入れて保管するようにしてください。
 0℃以下では坐薬がひび割れてしまうことがあるので、冷凍庫での保管は避けてください。

薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を
 坐薬は初めて使用する方にとっては、使い方がわかりにくいことがあります。また症状に応じて使用することが多いので、説明を受けてしばらくしてからの使用となることもあります。正しく安全に薬を使用していただくために、薬の使用方法で不明な点がありましたら、薬剤師に確認して使用するようにしましょう。

参考文献:ノバルティスファーマ株式会社 坐薬の基本と服薬指導