薬と上手に付き合うための基礎知識(10)

〜薬剤師~金子 昌弘〜

吸入薬(ドライパウダー)編

気管支喘息や慢性閉塞性肺疾患(Chronic Obstructive Pulmonary Disease:以下COPD)の治療を中心に使用される薬剤のため、馴染みの少ない薬かもしれません。しかし数年前からインフルエンザ治療でイナビルが使用されるようになり、今後使用する機会があるかもしれない剤型です。お薬を有効に安全に使用していただくために、今回は「吸入薬(ドライパウダー)の使い方と注意」を紹介したいと思います。

吸入薬とは

薬剤を吸うことにより気管支に入れて作用させる薬です。作用させたい患部に直接薬を到達させるため、内服薬に比べて少量で効果が得られます。そのため全身への副作用も少ないことから、気管支喘息およびCOPD治療では最も基本となる剤型です。

ドライパウダー吸入器(粉状の薬剤を自身の吸う力で気管支に入れるタイプ)と加圧噴霧式定量吸入器(噴射ガスで噴霧された薬剤を吸うタイプ)、また専用の機器で薬剤を霧状にして吸入を行うネブライザーに分かれます。

薬効別に大別するとステロイド薬、β2刺激薬、抗コリン薬、および抗ウイルス薬があります。ステロイド薬は気道の炎症を抑える効果に優れ、直接患部に作用して全身への影響が少ないため、喘息においては治療の基本になる薬剤です。β2刺激薬は気管支に分布しているカテコラミンのβ2受容体を刺激することにより気管支拡張をさせる薬剤です。抗コリン薬は気道平滑筋を収縮させるコリン作動性神経を抑えて気管支を拡張させ、COPD治療の基本になる薬剤です。抗アレルギー薬は、気管支を収縮させる作用があるヒスタミンを抑えて気管支の収縮を予防します。抗インフルエンザ薬は、インフルエンザウイルスの増殖に必要なノイラミターゼという酵素を抑えてウイルスの増殖を抑えます。

ドライパウダー吸入器一覧

ステロイド薬パルミコートタービュヘイラー、フルタイドディスカス、フルタイドロタディスク、アズマネックス
β2刺激薬メプチンクリックヘラー、オンブレス吸入用カプセル、セレベントディスカス、セレベントロタディスク
ステロイド薬・
β2刺激薬配合剤
アドエアディスカス、シムビコートタービュヘイラー
抗コリン薬スピリーバ吸入用カプセル、シーブリ
抗アレルギー薬インタールカプセル
抗インフルエンザ薬イナビル、リレンザ

吸入方法

ドライパウダー吸入器の最大の利点は、加圧噴霧式定量吸入器と異なり噴霧と吸入のタイミングを合わせる必要がないところです。自分の吸気により吸入器の中にセットされたドライパウダーを空気と一緒に吸い込みます。各薬剤によって吸入するまでの器具の準備は異なりますので各々説明書の確認が必要です。準備した後の吸入方法は基本的に同じです。

1. 説明書を確認して吸入の準備を行ってください。

2. 吸入器を持つとき、空気の取り込み口(空気孔)がある場合は指でふさがないようにしてください。

3. 息を吐いてから吸入口をくわえて口から「スーッ」と大きく吸い込みます。吸入前に息を吐き出す際は、決して吸入口に向けないようにしてください。吸入する分の薬が飛散してしまいます。

4. 吸入後2〜3秒(苦しくない程度)軽く息を止めます。一部不要の薬剤もありますが、薬剤の患部への付着を高める目的があります。

5. 息を吐き出します。その際、吸入口に息を吹きかけないようにしてください。湿気を避けるため、また一部の製品では残っている薬の飛散を避けるためです。

6. ステロイド薬、β2刺激薬および配合剤は、吸入した後に必ずうがいします。

7. 繰り返し使用する吸入器は、吸入口を清潔に保ってください。汚れたら乾いた布かティッシュペーパーで拭いてください。吸湿を防ぐため、水で洗ったり湿ったもので拭くことは避けてください。

使用する前に必ず確認してください

薬剤の種類により1日に使用する回数や1回に吸入する回数が異なりますので医師の指示を必ず守るようにしてください。また薬剤が器具に内蔵されているものは、種類により使用できる吸入回数は28回から100回を超えるものまで様々です。残りの回数がわかるように残量数値表示機能(ドーズカウンター)がついていますので必ず確認するようにしてください。

吸入後にうがいをする吸入ステロイド薬

とかくステロイド薬は副作用を気にされる方が多い薬剤です。ただし吸入して使用することで、直接肺および気道に投与するので、内服に比べてより少量で効率よく治療効果を示します。また飲み込んでしまった薬剤も肝臓で代謝されて活性がなくなりますので、全身への影響が少ないことが特徴です。承認容量範囲内であれば、副腎皮質機能や骨密度、小児の成長に対する影響もほとんどないことが報告されています。

しかし吸入ステロイドの副作用には嗄声(しわがれ声)、口腔カンジダ症、咽頭痛などの局所的なものがあります。吸入した薬剤の10〜40%は目的の肺内に付着して効果を現しますが、目的以外の口腔や咽頭部に付着した薬剤で副作用を起こすことがあります。

そのため、副作用を予防するために「うがい」をして、目的以外の口腔や咽頭部に付着した薬剤洗い流すことが重要です。もし「うがい」ができない場合は、飲み物等で口をゆすいで飲み込むようにしてください。「うがい」が必要な薬剤は、ステロイド以外の一部の薬剤でもありますので、薬剤師に確認するようにしてください。

薬の使用方法がわからないときは薬剤師に確認を

坐ドライパウダー吸入器の場合、加圧噴霧式定量吸入器と異なり吸入するタイミングが合わせやすい利点がありますが、吸入前の準備が薬の種類によって異なり確認していくことが必要です。また「1回2吸入」を、「2回分セットして一度に吸う」ことと解釈されてしまうことも考えられます。安全に薬を使用していただくために、薬の使用方法て不明な点がありましたら、まず薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。


参考文献:グラクソ・スミスクライン株式会社 吸入療法ガイド