薬と上手に付き合うための基礎知識(18)

〜薬剤師~金子 昌弘〜

睡眠薬編

眠れない=不眠、対応策としての薬は睡眠薬、でも依存性が怖いから服用したくない、効かなかったら強い薬になるのかしら?などよく質問される内容です。

不眠症は寝つきが悪い「入眠障害」、眠りが浅い「熟眠障害」、夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」、朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」など様々なタイプに分かれます。

不眠症の原因は、一過性の環境の変化やストレスによるもの、心身的な病気によるものや精神疾患によるものがあります。今回は不眠症の薬について分類と特徴、注意点について紹介したいと思います。

薬剤と睡眠の関係

ベンゾジアゼピンとは、ベンゼン環とジアゼピン環が中心となる化学構造の化合物です。中枢神経系のGABAA受容体に存在するベンゾジアゼピン受容体に結合して、塩素イオンCl-の流入を促して脳の働きを抑えて鎮静、睡眠導入を高める作用があります。ベンゾジアゼピンの基本骨格を持った化学物質をベンゾジアゼピン系、異なる構造の化学物質を非ベンゾジアゼピン系と分類しますが、ともにGABAA受容体のベンゾジアゼピン受容体に結合して作用します。

GABAA受容体にはαサブユニットがあり、薬剤のサブユニットへの選択性で効果と使用後の注意に対して違いがあります。α1は鎮静効果、睡眠作用および依存、α2は睡眠と抗不安作用および筋弛緩、α3は睡眠作用と抗不安作用、抗うつ作用および筋弛緩、α5は筋弛緩や学習や記憶、耐性に関与しています。α1は筋弛緩に関しては他に比べ極めて弱いので転倒を予防するために現在では中心的な位置付けになっています。ただし依存にも関与するので、医師の指示を正しく守るなど注意をしていくことが必要です。非ベンゾジアゼピン系では、α1とα2、α3への作用のバランスによりベンゾジアゼピン系よりも副作用がより少ない薬剤と考えられます。

ベンゾジアゼピン系睡眠薬

化学構造式がベンゾジアゼピンを基本骨格とする睡眠薬です。繰り返し使用しても効果が低下しにくく、自然な睡眠が得られるためよく使用される薬です。服用に際しては医師の指示を守り、増量するとき、また減量や服用を中止する際は医師とよく相談することが大切な薬です。特に短時間型の睡眠薬は長期服用していた場合、急に服用を中止すると、その後の睡眠が不安定になることがあります。計画的に減量して終了していくことが必要な場合があります。作用時間の長い中間型や長時間型は急な服用の中止での影響が少ないですが、翌朝以降にも効果の影響が残り、生活に支障をきたすことがあります。特に薬を代謝する生理機能の低下した高齢者では注意が必要です。トリアゾラムは一部の抗真菌薬や特別な抗ウイルス薬とは併用できません。

非ベンゾジアゼピン系睡眠薬

ベンゾジアゼピンとは異なる化学構造式の睡眠薬ですが、GABAA受容体のα1、α2、α3のバランスがとられているため筋弛緩が少ないため転倒などが少なく、依存性もつきにくいため、安全性がより高いタイプです。

オレキシン受容体拮抗薬

日中に眠くなりにくいのは、オレキシンという覚醒をコントロールする物質が作用しています。夜間にオレキシンの受容体を遮断して働きを抑えて、睡眠をもたらすタイプです。薬理学的に薬剤による依存性や筋弛緩による転倒に対してより考慮された安全性が高いタイプで。現在はスボレキサントがありますが、抗生物質としてよく使用されるクラリスロマイシンとの併用ができないため注意が必要です。

メラトニン受容体作動薬

メラトニン受容体を刺激して睡眠の効果を出します。ベンゾジアゼピン受容体には関与しないので筋弛緩や記憶障害などがないため安全性の高いタイプです。現在はラメルテオンがありますが、抗うつ薬のフルボキサミンマレイン酸塩とは併用ができません。

睡眠薬の分類

分類(作用時間) 主な商品名(一般名)
ベンゾジアゼピン系(超短時間型)

ハルシオン(トリアゾラム)
ベンゾジアゼピン系(短時間型)

レンドルミン(ブロチゾラム)、エバミール・ロラメット(ロルメタゼパム)、リスミー(リルマザホン塩酸塩水和物)
ベンゾジアゼピン系(中間型)

ユーロジン(エスタゾラム)、サイレース・ロヒプノール(フルニトラゼパム)、ベンザリン・ネルボン(ニトラゼパム)
ベンゾジアゼピン系(長時間型)

ドラール(クアゼパム)、ソメリン(ハロキサゾラム)、ダルメート(フルラゼパム塩酸塩)
非ベンゾジアゼピン系(超短時間型)

マイスリー(ゾルピデム酒石酸塩)、アモバン(ゾピクロン)、ルネスタ(エスゾピクロン)
オレキシン受容体拮抗薬

ベルソムラ(スボレキサント)
メラトニン受容体作動薬

ロレゼム(ラメルテオン)

医師は症状に応じて最適な睡眠薬を選択します

不眠症には寝つきが悪い「入眠障害」、眠りが浅い「熟眠障害」、夜中に目が覚めてしまう「中途覚醒」、朝早く目が覚めてしまう「早朝覚醒」など様々なタイプに分かれます。睡眠障害の症状と患者さんの生理機能などを考慮して使用する薬剤の種類と量を決めます。安全に使用するために一般的には少量から開始して、効果をみて適切な量にするので、眠れないから勝手に服用する量を増やしてはいけません。適切に使用すれば習慣性はほとんどありません。眠れないと医師に相談するともっと強い薬にされてしまうのではと伺うことがあります。睡眠薬には多くの種類があるので、他のタイプの薬を使用することで、より体にあった薬を選ぶことができます。

他院受診時などの前に必ず報告してください

スボレキサントは抗生物質としてよく使用されるクラリスロマイシンとの併用ができないため注意が必要です。トリアゾラムおよびスボレキサントは一部の抗真菌薬や特別な抗ウイルス薬とは併用できず、ラメルテオンは抗うつ薬のフルボキサミンマレイン酸塩と併用ができません。服用している薬を正しく伝えるためにお薬手帳を使用して飲み合わせを確認することが重要です。

薬の注意点など、不明な際は薬剤師に確認を

患者さんから睡眠薬は依存症や認知症になるから服用しない方がいいのではとか、友人から睡眠薬に頼ってはいけないと言われて相談される方がいます。医師の指導に従い正しく使用して、ふらつきや脱力感などに注意を行えば、他の病気の治療薬と同じ大切な薬と考えるべきでしょう。正しく薬を使用していただくために、薬の使用法で不明な点がありましたら、薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。