〜薬剤師~金子 昌弘〜

男性のトイレに係る薬編

トイレが近いことを歳のせいだと思いあきらめていたり、恥ずかしくて相談できなかったりしている方は多いと思われます。

過活動膀胱という病気や、男性では前立腺肥大による症状の場合があり、治療により症状を緩和させることができます。逆に前立腺肥大症の場合では、別の病気で使用する薬剤によって症状を悪化させるものがあり注意が必要です。

今回は男性のトイレに係る薬について分類と特徴、注意点について紹介したいと思います。

過活動膀胱と前立腺肥大症の関係

過活動膀胱とは突然の強い尿意が起こり、我慢ができなくなります。脳と膀胱を結ぶ神経の障害によるものや膀胱の神経が過敏になっていることがあります。また男性では尿道を取り囲むような形をした前立腺があります。一般的には50歳を過ぎたころから加齢とともに肥大します。肥大に伴い尿道を圧迫し、また前立腺の筋肉が過剰に収縮して尿道が圧迫されて尿の出が悪くなります。尿の出が悪くなると、尿を出そうと膀胱が過敏になりトイレの間隔が短くなります。

前立腺肥大症治療薬

尿道や前立腺の緊張状態を緩和させるために交感神経選択的α1阻害薬を使用します。前立腺の肥大が強い場合は、前立腺肥大を起こすテストステロンから5α還元酵素により産生されるジヒドロテストステロンが関与しているため、5α還元酵素阻害薬を使用してジヒドロテストステロンの産生を抑える薬剤や、抗男性ホルモン薬を使用してテストステロン濃度を減少させて前立腺を縮小させます。PDE-5阻害薬は前立腺や尿道の平滑筋を弛緩させ、また血管を拡張させて血流量を高めて尿の出を改善します。植物エキス製剤には前立腺の炎症を抑えるものがあります。

過活動膀胱治療薬

抗コリン薬が中心に使用されます。膀胱の筋肉を弛緩させて異常な収縮を抑える効果がありますが、口腔の乾燥感や便秘、目のちらつきなどを起こすことがあります。β3受容体作動薬は抗コリン薬とは異なった作用をして膀胱の筋肉を弛緩させます。抗コリン作用により前立腺肥大症に伴う排尿障害を悪化させることがあるので、男性では前立腺肥大症を伴う場合は交感神経選択的α1阻害薬と併用します。閉塞隅角緑内障の場合、使用できない薬剤があるので注意が必要です。また一部の薬剤では閉塞隅角緑内障以外の緑内障でも使用できないことがあります。緑内障を指摘されている場合はどのタイプの緑内障かを確認しておくようにして、服用開始時は眼科医に報告するようにしてください。

排尿障害改善薬の分類

前立腺肥大症薬 主な商品名(一般名)
交感神経選択的α1阻害薬 ハルナール(タムスロシン塩酸塩)、フリバス(ナフトピジル)、ユリーフ(シロドシン)
5α還元酵素阻害薬 アボルブ(デュタステリド)
抗男性ホルモン薬 プロスタール(クロルマジノン酢酸エステル)、パーセリン(アリルエストレノール)
PDE-5阻害薬 ザルティア(タダラフィル)
植物エキス製剤 エビプロスタット(オオウメガサソウエキス、ハコヤナギエキス、セイヨウオキナグサエキス、スギナエキス、精製小麦胚芽油)、セルニルトン(セルニチンポーレンエキス)
過活動膀胱治療薬 主な商品名(一般名)
抗コリン薬 ウリトス、ステーブラ(イミダフェナシン)、ベシケア(コハク酸ソリフェナシン)、デトルシトール(酒石酸トルテロジン)、トビエース(フェソテロジンフマル酸塩)、バップフォー(プロピベリン塩酸塩)、ポラキス(オキシブチニン塩酸塩)
β3受容体作動薬 ベタニス(ミラベグロン)

他院受診時などの前に必ず報告してください

前立腺肥大症がある場合、併用する薬剤によっては排尿障害を悪化させるものがあります。症状によっては尿閉(尿が膀胱に充満していても排尿できない状態)を起こすことがあります。抗コリン作用のある胃腸薬、下痢止め薬、抗うつ薬や抗精神病薬、抗不整脈薬および過活動膀胱治療薬(交感神経選択的α1阻害薬と併用して回避)、抗ヒスタミン薬などがあります。

市販の風邪薬や鼻炎薬、胃腸薬、下痢止めなどにも抗コリン作用のある成分が含まれるものがあり注意が必要です。また交感神経選択的α1阻害薬を服用している場合には、眼科手術中に術中虹彩緊張低下症候群の報告があります。白内障の手術などを予定している場合には、眼科医師に交感神経選択的α1阻害薬を服用していることを伝えてください。

過活動膀胱治療薬は緑内障のタイプによっては服用に注意が必要で、薬剤によっては使用できないものもあります。「点眼薬のみの使用なので飲み合わせには関係ないと思い、医師や薬剤師に伝えなかった」と伺うことがあります。

他の診療科の病院を受診する際には、必ず病名を伝えるとともに、使用している薬を正しく伝えるためにお薬手帳を使用してください。市販の薬を購入する際にも、お薬手帳を忘れないようにしてください。

薬の注意点など、不明な際は薬剤師に確認を

尿道や前立腺の緊張状態を緩和させるために交感神経選択的α1阻害薬の使用の際は、立ちくらみやめまいに注意してください。血圧の薬を服用している場合は症状が強まることがあります。タダラフィルは一部の狭心症治療薬を使用している場合や、別の病気で治療を受けている場合には服用がでないことがあります。お薬手帳を活用して他の薬との飲み合わせなどの注意を受けるようにしてください。

トイレに係る薬を使用している方は、別の病気で使用する薬の影響を受けたり、使用できない薬剤があります。また自身の緑内障のタイプによってはトイレに係る病気の治療薬で使用できない薬もあります。

注意をしていくことが多いため、安全に薬を使用していただくために、薬の使用法や飲み合わせなどで不明な点がありましたら、薬剤師に確認して適切に使用するようにしましょう。